第1部 南カリフォルニア
 第5章 砂漠を越えて(3)
  5月27日(火)HWY138〜6月4日(水)Kennedy Meadow


6月2日(月)
 5時半起床。体が重い。/きつねうどんを作る。期待したほど美味しくなくて残念。/時間に余裕があるのでのんびりとパッキング。水もフィルタする。1日3Lが適量のようだ。/7時20分出発。日陰がないせいか暑い。今日はシャツを換えた。洗剤のニオイが心地よいが、やや暑い。/カメラの日付設定がONになっていたことに気づき、ショック。/11時前、WalkerPassを越える。食料は無事だった。/11時半、出発。淡々と登る。/ようやく山の雰囲気がシェラらしくなってきた。/石部さんたちは5月23日にWalkerpassを越えているらしい。20日にモハベ発とすると、結構なスピードだ。/しかし、僕にとって、「日本人初」ということはどういうことなのだろう。単純に、一番であるということは嬉しいし、名誉なことなのだが、逆に言えば、誰かにほめてもらうために歩いているわけではないのだが。/1週間以上、彼らのほうが早く出ているのだから、早く着くのは当たり前だ。/Restdayがとれないのがしんどいところだ。まあ、できるだけ歩いてみよう。/一日、淡々と時計だけ見て歩く。17時30分、計算どおりJosuatreeSpring着。蚊と蝿が多い。靴下を洗う。/チェコから来たMylek?とBelonicaのカップル。水場で衣類どころか食器まで洗っていた。/東欧のバックパッカーというのも珍しい。/夕食は親子丼とナスの漬物。焚き火をする。/タバコが無くなったら困るなあ。足の筋肉痛がよくない。悪化する前にレストデイをとりたいところだが。まずはKennedyMeadowに着いてからか。とりあえず、あと2日、頑張ろう。Today 19.4Mi Total 659.3Mi
6月4日(水)
 気合の2時半起床。肌寒い。/朝食のシリアルは相変わらず美味しい。甘いミルクが疲れた体に心地よい。/3時40分、ヘッドライトをつけて出発。星が綺麗だ。1500Feetを一息に登る。/5時過ぎ、夜が明ける。5時半、トレイル・サミット着。一気に下る。/3MPHの快調なペース。/1時間半ごとに軽食を取る。やや物足りないが仕方が無い。/9時過ぎ、KernRiver。シェラの豊富な水に感動。山ひとつ越えただけでこんなにも違うとは!KennedyMeadowの眺めもいい。やはりシェラは素晴らしい。/11時半、KennedyMeadowグロセリーストア着。Dug,DNA,Stone,Freefall,Troll&Laffy-tuffy,Graham,Happy,Patric,Walkdad,Glen,Lyan・・・顔なじみのハイカーたちが集まっている。・・・/明日からいよいよ待望のハイシェラだ。雪がやや心配だが、満喫したい。いい一日だった。Congratulation! Quarter of PCT!
Today 21.3Mi Total699.4Mi
 

 日本のような狭く、急峻な地形の土地に住んでいると、山を意識するということはなかなか難しい。高速に乗って30分も走っていると、あっという間に道は山あいに入ってしまう。日本列島は平地が少なく、列島そのものが山脈みたいなものだからかもしれない。
 ところが、PCTを歩いていると、アメリカ大陸の広さはそのあいまいさを許さない、と思う。「あ、ここから山脈が始まる」というのがよく分かるから、とでも言えばいいだろうか。山と平地の違い。大地の中から、山が生まれるところが、わかるのだ。
 だだっ広く、ところどころ起伏のようなものがあったに過ぎない砂漠が、いつしか大きくうねりだし、谷は深くなり、丘は高く、厚くなる。振り返るといま越えたばかりはずのハイウェイが細く大地を横切って見える。背後の土地はただただ平らなのに比べて、トレイルの続く先は空を指して、逆光の中、山肌の肩を巻くように続いている。ひとつの峠を登りきり、幾重にも連なる山並みを目に収めたとき、僕ははっきりと自覚できた。山脈がここから始まること、そして僕が、シェラネバダと呼ばれるこの美しい場所へたどり着いたということを。 
風車。ぶおんぶおんと回っている。なかなかシュールな光景である。
どこか牧歌的でもあり、近未来的でもあり。
ジョシュアトゥリーに囲まれてのキャンプもこれが最後。砂漠ともお別れである。
埋めた食料を掘り出す。
ややハレーション気味?だがトレイルの両脇は見渡す限りの紫色の花畑。
ここはもう、砂漠ではない。懐かしい、シェラネバダへのエントランスだ。
ケネディミドゥーのお店前にて。長かった南カリフォルニアもこれでおしまい。そしていよいよここから、PCTのハイライトに入る。
それなりに味のある、店構えだった。収入の大部分をPCTハイカーに依存しているのではないかと思われる。

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