第2部シエラネバダ
 第1章 ハイシエラの夏(3)
  6月5日KennedyMeadow〜6月18日RedsMeadow


6月12日(木)
 5時45分起床。シュラフが湿っている。/朝食はラーメン。靴が凍っている。さすがにこの寒さではコーンフレークを食べる気にはならない。/食料は全てベアキャニスターに入る程度まで減った。/7時20分、出発。トレイルを探しながら進む。標高があがると一面の雪でトレイルは完全に埋まっている。地図を頼りに、地形を確認しながらオフトレイルで登る。/道が分からないというのは精神的に非常に疲れる。/ジャスコのマークの入ったレーズンをかじりながらしばし家を思い出す。/時間がたつにつれ、雪が柔らかくなってくるので焦る。/10時30分、Pinchot Pass着。下りの北面は雪が少なく安心。単調な下りを経て、UpperBasinへの登り。傾斜は緩いが、相変わらずトレイルが埋もれていて時間がかかる。今日は距離が短いのでゆっくりできるかと思っていたが、そう甘くは無かった。/16時45分、Mother Passのスイッチバックの手前にキャンプイン。寝袋を干す。/夕食は石狩ぞうすいとみそ汁。/FMがハードロックしか入らず。/久々に余裕のある時間にキャンプできた。爪を切る。/景色はすごいが寒いのでテントの中でくつろぐ。/明日、Mother Passは無事越えられるだろうか。逆に凍ってはいないだろうか。この時期のシエラは危険度、難易度が高すぎてゆっくり楽しめない。早くここを抜けたい?/Today 11.4Mi Total 810.6Mi

 ボーイスカウトをやっていると、地図の読み方、コンパスの使い方は必修科目だ。お題目のように、やれ地図に線を引け、16方位を覚えろ、地図上の2点から現在位置を割り出せ・・・といくつもの課題が与えられ、所定の項目をクリアすると『読図章』などのバッジがもらえるシステムになっている。確かに、読図は面白い。カーナビ全盛の今、ともすれば地図に触れることの無い子供たち(私たち)にとって、紙の上に描かれたラインから空間をイメージするこの遊びは非常に有益だ。
 だが、問題なのは、せっかく学んだ読図の知識、コンパスの使い方も、それを実際に活用する機会はほとんど無い、ということだ。ボーイスカウトでハイキングに出かけても、登山に出かけても、あらかじめルートが設定されたコース、登山道を離れて計画をたてることはまず無い。たいていは、道標が整備され、迷うことはめったにない。高校生年代になると、町も含めた長距離のバックパッキングを行うこともあるが、読図はともかく、コンパスで針路を発見しなければならないほどのフィールドに出会うことはまず無い。実際僕がそうだった。

 僕は初めて、自然の中で道を探す経験をした。今までの経験と記憶を頼りに、地形を読み、方角を見極めて峠を目指した。お題目ではない、知識が経験となる瞬間だった。知識を武器として、足跡ひとつ無い荒野に道を、そして未知を切り拓く。スカウトとして、こんなに誇らしく、胸躍る感覚がほかにあるだろうか。

 ボーイスカウトの指導者として後輩たちに語りかけるいま、ひとりでも多くのスカウトが、この感覚を味わってくれることができるよう、願ってやまない。

6月10日の夜。フォレスターパスからの下りに憔悴しきった顔。一日でボロボロ。
天気は毎日晴れ。午後から曇り。雷雨にはこのあたりでは見舞われず。
6月のシエラは雪解けの季節。池の真ん中に浮かぶ道標。空も大地も青い。
6月11日。グレンパスにて。北側斜面はこんな感じ。
良くもまあ、こんな荷物背負ってこんなところまで。
フルパッキングの背中には靴下を干す。
南側はこんな感じ。
岩と雪、そして湖。これぞシエラネバダ。シエラで一番美しいとも言われる、レイ・レイク。ちょっと分かりづらいかもしれないけどいい写真なので拡大してみて欲しい。
レイ・レイクはトラウト釣り放題。3年前にはここで日本人のパックツアーに会ってさんざんご馳走になった。
どこでシャッターを切ってもいい写真になってしまうので困る。
狙ったような背中には写らなかった。レイレイク湖畔。
絵葉書のような一枚。

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