第3部 北カリフォルニア
 第2章 さらばカリフォルニア(1)
  7月21日(月)Castella〜7月29日(火)CA−OR州境


7月22日(火)
 6時過ぎ起床。レストランへは行かずに、昨日の食料の残りで朝食を済ます。パッキングして、手紙の残りを書いて、7時半、ブレンダの迎えでトレイルヘッドへ。クリスと3人でビスタポイントへ行った後、トレイルへ戻る。いい母子だった。/食料を詰めすぎて荷物が久々に重い。4000feet近い登りで暑さも厳しく、辛い登りが続く。水の消費量が多い。/6時半、23マイルの地点で断念。湖で水を汲む。/途中でウンコしたら中に血のようなものが混じっていて怖くなる。やはり生水のせいだろうか。/Diesel,DNA,snakeの3人に追いつかれる。先に行ってもらおう。暑さが体力を奪っている。食料が少し多すぎた。頑張って食べて軽くしよう。日本の食事が恋しい。/体も、精神も疲れ果てている。テントが嬉しい。/気の緩みに注意! Today 23.1Mi Total 1522.8Mi

前章で通ってきたBurneyFalls〜Castlecragsの区間(ガイドブックではセクションOと呼ばれる)は、全行程の中でも最もトレイルの整備状況が悪いところとされる。予算の関係なのかどうかはよく分からないが、とにかく道は藪だらけ、倒木だらけのしんどいところだった。しかもその区間を抜けた補給地Castlecrags(Casttela)にはろくなモーテルもなく、ただ雑貨屋とガススタンド、郵便局があるだけ。これではとても体がもたないので、近くの町への移動を試みる。運良く、バカンスに来ていたブレンダ&クリス母子と親しくなり、隣町のDunsmuirへ送ってもらうこととなり、しかも翌朝トレイルヘッドまで送り返してくれるという幸運に恵まれた。

 母親のブレンダが話すところによると、サンフランシスコから夏休みを利用して二人で2週間のキャンプに来ているという。車でいくつかのキャンプ場を回りながら、川で泳いだりブルーベリーを摘んだり、といった休暇を過ごしているらしい。息子のクリスも、20歳くらいだろうか、素直そうな青年で母親と楽しげに僕の話を聞いてくれている。ブレンダおばさんは僕の母よりもだいぶ年は上だろうか。背筋の伸びて、凛とした感じのいいおばさんだった。どこにでもいるキャンプを楽しむ家族連れだが、どこか違う雰囲気があった。

 別れる際、アドレスを交換した。住所と名前を書いてもらって、ようやく気づいた。住所は同じなのに、姓が違う。父親が中心となって、大家族で賑やかに楽しむスタイルが、ステレオタイプなアメリカの週末のキャンプのイメージだが、そこに母子二人で来ているのにもきっと理由があるんだろう。だけど、そんなことを全く感じさせないほど、二人はその休暇を楽しんでいるように見えた。そして、ブレンダおばさんの凛とした芯の強さはそんなところに理由があるのかとも思ったりもした。

 標高差1200mの長い登りのトレイルに息を喘がせつつ、そんなことを考えながら北へと歩を進めた一日だった。
ブレンダ&クリス母子。素敵な二人だった。
だいぶ痩せたかなあ。このころ。
CastleCrags。I−5からも見える有名な(?)観光ポイントらしい。
マウント・シャスタ。ネイティブの間では聖なる山として信仰の対象らしい。こないだオアゾの丸善で立ち読みしていたら「この山の聖なるパワーに曳かれてUFOも飛んでくる」みたいな記述があって驚いた。
このエリアは久々に景色もトレイルコンディションもいい歩き応えのあるところだった。分水嶺をひとつ越えるといい水が一杯湧いていて感動したのを思い出す。

第3部第1章 根性と人情のトレイル(4)に戻る  さらばカリフォルニア(2)へ進む