第4部オレゴン 森と湖の国で(3)
 7月29日(火)CA−OR州境〜8月20日(水)OR−WA州境


8月16日(土)
 6時過ぎ起床。夜にトイレへ行く癖がついてしまったのか、やや面倒だ。/7時過ぎ出発。Goverment Campへヒッチハイクするかどうか迷いながら進むも、後悔しないためにトレイルを登る。/3mi/hで計算通り。最後、Timberline Lodgeまでの登りが砂が深くてきつい。/15:30、Timberline Lodge着。完全な観光ホテルでハイカーの居場所が無い。ストアも食糧は売っておらず、仕方なく自販機でキャンディーバーを買い込んでいたら、石部さん夫妻登場。半日ほど後ろにいたのを、追いつかれたらしい。食糧があまっているとのことで、晩飯をわけてもらう。幸運。/Lodgeのピザ屋で夕食。オレゴンは良いということで一致。楽しいひととき。/トイレで体を拭いて、19時過ぎトレイルに戻ってキャンプ。風が強くやや冷え込む。/オレゴンもあと2日だ。/

カリフォルニア州に比べて、オレゴン州の記載が少ない、と思われるかもしれない。いいかげん記録を作ることに疲れてきて、手を抜いている、と思われても仕方がないのだが、そうではない。オレゴン州はあっというまに終わってしまうのだ。

UPDOWNも少なく、気候も温暖湿潤、加えて僕らも足が鍛えられてきているため一日に軽く20マイル、平均25マイルは歩けてしまう。風景も穏やかで楽しみながらのトレッキングが続く。(風景があまり良すぎても、写真を撮るのに忙しくなってしまい距離は稼げなくなる)道には鈴なりにハックルベリーやブルーベリーが茂り、小鳥に混じってベリー摘みに足を止めるのもまた楽しい。今までとはまた違った表情をトレイルは見せてくれる。

オレゴン州について、もうひとつ触れておかないといけないのが、サイドトレイルのことだ。ガイドブックではAlternateRoute として紹介されているが、つまり正規のPCTだけではなく、オレゴン・スカイライン・トレイルなど他のトレイルをたどって歩を北へ進めることもできる場合が多い。場合によってはPCTより眺望が良かったり、水場が豊富だったりと、ガイドブックでもPCTよりむしろサイドトレイルの方を推奨しているときすらある。

ここで悩ましいのが、PCT踏破というからには、トレイルをそれることなくきっちりと全部踏んでいかなければ踏破といえないんじゃないか、という問いだ。大幅なショートカットをしたりヒッチハイクをしたりすればそれは完全踏破とは言えないが、一部でもトレイルをそれたとしたら、それは胸を張って踏破したと言えるかどうか。しかし、そんな些細なことにこだわってみすみすつまらない道程を喘ぎながら進むのもやはり馬鹿げている気がする。さりとて、僕の場合には「PCT日本人初踏破」のタイトルがちらついている。さてどうしたものか。

この問いには結構悩んだが、結論として僕が出したのは、「歩いてメキシコからカナダまで行く」ことにのみこだわり(つまり、車<ヒッチハイク>でショートカットしない)、ルートについては臨機応変に考えることだった。実際に歩いたデータはここに記載してあるが、表にも書いたように幾度かサイドトレイルを利用している。多少逡巡はしたが、いずれもそのときの判断は間違っていなかったと思う。

後で記すが、ワシントン州ではPCTそのものが山火事で閉鎖されてしまい、大幅に迂回することになったので結果的にはPCTを完全踏破したとは言えないのだが、メキシコからカナダまで、自分の足跡が途切れることなく続いていることだけには自信を持って記したいと思っている。
8月13日朝、井上氏の見送りを受けて。埃っぽいトレイルが続いている。この道がメキシコからカナダまで続いているというのは歩かなければ信じられなかった。
8月14日、ジェファーソン・パークにて。ガイドブックの表紙と同じ写真。風光明媚な高原湿地帯だった。
夏にもかかわらず一面のお花畑。
マウント・ジェファーソンをバックに。あふれんばかりの光がまぶしいなあ、この頃。
オラリー・レイク・リゾート。山奥のひなびた、日本語で言うリゾートとはちょっと違うが、静かないい場所だった。一泊80$のキャビンを借りて休養。ひとりで湖を眺めつつ、ひさびさに酔っ払うまで飲んだ。たまにはこんな日があったっていい。
オレゴン州を象徴する秀峰、マウント・フッド。その中腹にあるティンバーライン・ロッヂはちょっとした観光地。石部さんと一枚。

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