ショートコラム(1) トレイルネームについて


キックオフパーティーに参加申し込みをしたとき、氏名・出身の他に見慣れない欄があった。Trail Nameという欄である。参加者一覧を見ると書いてあったり、無かったり。空欄のまま申し込んだ。

 端的に言えば、トレイルネームとは、トレイル上でのアダ名だ。自分で名乗っているものもいるし、他のハイカーが勝手につけたものもある。本名は知らないけれど、トレイルネームなら知っている、ということもしばしば。中には、「5年前にアパラチアントレイル歩いたときにこのトレイルネームをつけてもらったんで、この名前で呼んでくれ」なんてのもいる。

 記憶に残るトレイルネームをいくつかあげると、

『DNA』(分子生物学の研究者だったから)、
『Diesel』(機関車みたいにでかくのしのしと歩くやつだった)、
『Snakecharman』(一日に3回も蛇を見たら、一発で『蛇使い』の呼び名に)、
『Freefall』(意味は不明だが社会から外れて落ちていく感じがするなあ)、
『RunningFeather』(「走る羽」確かに速いおっさんだった)、
『Split pea』(ポピュラーな豆の缶詰。どうせこればかり食べていたんだろう)
『Tin Cup』(同名の映画を見かけたことがある。登場人物に似ている人でもいるのだろうか)
『Nothernlights』(アラスカ出身)
etc,etc,

スタート時にはついていなくても、いつしかみんなぴたっと納まるトレイルネームがついていたりするのがおかしい。
ちなみに僕のトレイルネーム「Mr.Tea」はワーナースプリングスで部屋をシェアしたDugがつけてくれた。朝晩面倒でも日本茶(Tea)を入れていることと、ファーストネームのTAKETOのTをかけてくれているようだが、このミスターT という名前にはもうひとつ別の意味があったようだ。
 特攻野郎Aチームという20年ほど前のドラマに出てくる、「コング」という名の巨漢を演じた俳優がMr.Tというらしく、なかなかの人気者だったらしい。(ボブ・サップみたいなものか)僕が、”I'm Mr,T”と名乗ると、黒人の巨漢とアジア人の小柄な僕を比べて面白いのか、すぐに名前を覚えてくれた。いいトレイルネームをもらった、と思う。次の旅でも使いたい。