第1部 南カリフォルニア
 第2章 キックオフパーティー(1)

2003年4月22日(火)カンポ〜2003年4月27日(日)マウント・ラグナ


4月24日(木) レイク・モレナ・キャンプグラウンド
 6時20分起床。ラーメンを食べてパッキングしていたら、パットおばさんが時間があればキックオフパーティーに戻れるようにピックアップしてくれるとのこと。今日、明日の行程を伝えて、もし可能なら戻って来たいと伝える。/8時30分出発。ようやく本来の日差しに戻る。痛いくらいだ。午前中は快調。/エイミーおばちゃんといっしょに歩く。/午後、体が重くペースが伸びない。日差しに体力を奪われる。/15:45キャンプ地着。頭を洗って体を拭いていたら、Billとその親父(Jim?)に歓待される。ビールと鮭缶、その他をもらう。/嬉しいが重いのですぐ食べる。/タバコが旨い。手紙を書く。星がきれいだ。/Today 12.6Mi, Total32.8Mi

 4月21日にメキシコ国境を踏み、翌22日からいよいよバックパッキングの旅が始まった。最初の目的地は国境から20.2Mi先のレイク・モレナ・キャンプグラウンドだ。ちなみに、1マイルは1.6km。ざっと32kmということになる。一日で歩こうと思えば不可能な距離ではないが、出だしなので1泊2日の行程を組む。

 スタートから程近いこのキャンプ場では毎年4月の最終週の週末に、Annual Day Zero Pacific Crest Trail Kick Off (通称ADZPCTKO、以下キックオフ)という催しが開催される、早い話が、その年のPCT踏破に挑戦するハイカーと、過去に歩いたハイカー、そしてそれを支えるボランティアたちが一同に会するPCTのお祭りだ。今年は4月25日から27日にかけて開催されることになっていて、僕も事前にウェブサイトからエントリーし、それに間に合うように出発したわけだ。

 21日の夜半から天候は雨。朝方にはいったん上がったが、その後も降ったり晴れたりの天気が続く。カンポからレイク・モレナまでの20マイルは水場も無く、最初から2日分の水、約3Lを背負って歩く。雨が降っているのに飲み水は無いというしんどいスタート。密入国者むけだろうか、スペイン語で書かれた看板があちこちに建っている。
 23日(水)昼過ぎにレイク・モレナ着。キックオフは週末からだというのに気の早いハイカー数人が(僕もその一人だが)もう集まっている。自己紹介し、世間話。やはり話題はもっぱらトレイルの状況、使用する装備、食糧のこと。話は5分の1ほどしか聞き取れないが、大体想像はつく。どこの国へ行っても山屋のモノ自慢は変わらない。ただし、PCTハイカーのモノ自慢はちょっと変わっている。価値基準は高いとか新品だとかでは全く無く、『いかに軽く、安く、便利か』に尽きるのだ。これについては後述しよう。

 このまま週末までゴロゴロしていようかどうか迷ったが、それも暇だったので23マイル先の次の街、マウント・ラグナまで歩き、そこから週末にここへ戻ってくる計画を立てる。キャンプ場にいたパットおばさん(前出のパットとは無関係。旦那さんのウォルトがPCTを歩き、奥さんのパットが車でサポートしているというバージニアからきた老夫婦。このあと先々でお世話になることになる)がピックアップしてやってもいいと言ってくれたのでそれに甘えて先へ進むことにする。

 24日、ようやくカリフォルニアらしい日差しが戻る中、レイク・モレナを後にして歩を進める。この日の行程は12マイル。早めにキャンプ場にテントを張っていると車でやってきたおっさん親子二人に声をかけられる。PCTハイカーだというとビールやらシャケ缶やら山のように持ち出してきて歓待される。どうやら、この父親のほうが今年PCTに挑戦するらしいが、どうも変わったおっさんでバックパックは持たずに必要な装備はすべてフィッシング・ジャケットのポケットに。水タンクは手に持って歩き、常時タバコを吸っていないと狂ってしまう(本人談)らしい。テント・寝袋・雨具は使わず、ノース・フェイスの高所服を持ち出してきて「これで完璧なんだよ」と嬉しそうに語っている。
 どうやらこのおっさん、本当にこの装備で歩き出したらしく、このあと方々で他のハイカーから「クレイジーなハイカーがいる」という噂を聞いた。だが、彼がどこまで辿り着いたのか、それは謎のままだ。
4月22日(火)午前10時15分、カンポの街を出発。初日から雨でうんざり。荷物の見当がつかずとりあえず何でも詰めたため重かった。
スタートから2.6マイル。San Diego&Arizona Eastern鉄道を越える。いかにも西部の開拓鉄道といった感じ。
密入国者向けと思われるスペイン語の看板。サボテンと太陽、蛇の絵が書いてある。「砂漠の中で下手に逃げ回ると命を落とす」とか書いてあるのに違いない。
4月23日、レイク・モレナ・キャンプグラウンドで。気の早いPCTハイカー達。(左から)パットおばさん、ダグ(アラスカからきた高校教師)、ウェイン(カップラーメン好き)、靴下と手袋を兼用するノートン。
4月24日、スタートから26.1マイル。
ボウルダー・オークス・キャンプグラウンドにて。ようやく晴れた。あっという間に日焼けする。
砂漠は春真っ盛り。トレイルサイドには色とりどりの花が咲き乱れている。今年は雨が多いため、例年より綺麗に、長く咲いていると聞いた。
道端に置かれた飲料水のタンク。このあたりは水場が少ないため、近所のボランティアの人たちがこうして水を補給してくれている。これが無いと歩けない。
4月24日夕方。スタートから32.8マイルのシベッツ・フラット・キャンプグラウンドにて。いろいろくれたビル&ジム親子。親父のジムの方はクレイジーなハイカーだった。

参考リンク:Annual Day Zero Pacific Crest Trail Kick Offホームページ


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