第1部 南カリフォルニア
第4章 トレイルエンジェル!(1)
5月11日(日)ビッグベアシティー〜5月26日(月)HWY138
5月13日(火)
5:45起床。暖かい夜だった。/朝食も美味しい。/7時ちょうど出発。起床から1時間15分で出発。少しずつ早くなっている。/AM、Disel達にぬかれる。結局追いつけなかった。/曇っているわりには暑い。水の消費量が多い。午前中で1Lを飲み干す。すでにバテ気味。/午後はひたすら足の痛みと闘いながら歩く。今日はひたすら下りるので荷物が重いのはかまわないが足に負担がかかる。/靴もショック吸収が悪いのか、足裏と足首が痛い。/最後は足をひきずりながら歩く。ラスト1マイルを稼げなかった。渡渉もあったし。/Johnと一緒にキャンプ。歯磨き好きのおじさん。お菓子をもらう。/足のマメは状態が悪い。Wrightwoodで休もうか。/携帯が入る。メール受信。/Today 19Mi Total 314.7Mi
5月14日(水)
5時半起床、7時出発。Johnは早起きして出ていった。雲が多く、涼しい朝。/30分ほどでHwy173。電波がいいので日本に電話していたら、牧場の番犬に囲まれてびびる。/午前中は快調。/12時、SilverWoodLakeの登り口で昼食。パットおばさんとすれ違う。/湖はでかいがたいしたこと無い。噂のメキの大群はいなかった。/14:45Hwy138のOffrump。ここから気合を入れて登る。水も尽きた。/16:30 水場で水を補給。計画通り。/Johnが追いついてくる。朝イチで道を間違えていたらしい。17:45まで二人でキャンプ地を探しながら歩く。マメは意外とひどくなっていない。/夕食はとりめし、味噌汁、切干大根。/タバコとお茶が素晴らしく美味しい。Happiest Time!/Today 23.5Mi Total 338.2Mi
安直な表現で恥ずかしいが、旅の魅力の一つは人との出会いである。トレイルで出会った人たちの記憶も大事な思い出である。
ビッグベアシティーを出て、トレイルはロサンゼルスの東側を迂回するように回りつつ、北へ伸びる。このあたりは街も多く、たくさんのハイカーと共に歩いたり、トレイルエンジェルのお世話にもなった。この章ではそんな人たちとの出会いも書き記していきたい。
Johnと最初に会ったのは最初の補給地WarnerSpringsのちょっと手前、BarrelSpringsの水場だった、と思う。Alabamaから来たと言う小柄な彼は56歳。古いパックにこれまた使い古されたギアを詰め込んで、ひょこひょこと歩いていた。人懐っこいおっさんで、歩くペースも僕とそう変わらなかったことから、このあたりでよく一緒に歩いていた。
2001年にアパラチアントレイルの踏破を済ませたといい、植物のことに詳しかった。街ではいつも、奥さんに長い手紙を書いていた。歯磨きが好きで、トレイルでも常時、食事にかける時間の倍以上を歯磨きに費やし、そのうえに糸楊枝を持ち出して歯と歯の間を掃除していたのが印象的だった。僕がタバコを吸っていると、『俺は3ヶ月前から禁煙したんだ』と言いながらうらやましそうに眺められた。
ここまで書いて、ふと思い出した。そういえばWarnerSpringsで一緒に部屋をシェアした際に、名刺をもらっていたっけ。探すと小さな手製の名刺がパスポートカバーから出てきた。そこには彼のジャーナルのアドレスが記されている。開くと、懐かしい顔が待っていた。同じ日、5月13日の日記を読む。Taketo,my Japanese friendの記述に思わず胸が熱くなった。
Alabamaの片田舎に暮らす家族思いのおっさんと、遠い島国の無鉄砲な若者が偶然同じトレイルを歩き、キャンプを楽しむ。たった1週間あまりのことなのに、僕らはお互いのことを間違いなく友と認め合い、大切な旅の記憶として残そうとしている。人の思いは、空間や時間を越えて、つながることができる、と思った。更新を終えたらJohnにメールを書こう。そして、聞いてみよう。次はいつトレイルに戻るのか、と。
参考リンク:John N. Calhounの日記(Trailjournals.com) 5月13日あたりに僕がでてきてます。15日にはいい写真も載せてくれてます。
第3章サボテンと雪(4)へ戻る トレイルエンジェル!(2)へ進む