第3部 北カリフォルニア
 第1章 根性と人情のトレイル(4)

  7月1日(火)SouthLakeTahoe〜7月21日(月)Castella


7月15日(火)
 7時起床。今日はOldStationで一日休み。/DNAが何かぶつぶつ言っているので聞くと、どうやら僕のイビキで昨夜は眠れなかったらしい。かなりうるさかったらしく、(Beldenでもそうだったらしい)もう一緒には泊まらないと言っていた。ちょっと悪いことをした気がするが、仕方が無い。/レストランで朝食を取って、ズボンを縫い、タープにロープをつける。/DNAはここを出て、先に進むという。/昼ごろ、石部さん夫妻到着。DNAも交えて4人で昼食。僕も疲れているのか、そんなに食欲が湧かない。石部さんが昨夜の件について、「気にしない、気にしない」と言ってくれたのが助かった。/午後、今後の予定を立てる。9月15日にはカナダ到着の予定。遅くても9月20日だろう・・・/ここから残り半分。ちょうど2ヶ月の旅だ。いい旅になりますように。 Today 0.0 Total 1371.6Mi
7月16日(水)
 7時40分起床・・・/郵便局で荷物を送って10:45出発。暑い。/今までと打って変わって眺めのいいトレイル。荷物も軽く、快調に歩く。右足の痛みもさほど気にならない。/街をでたとたんに次の補給を考えているのがおかしい。/夕方、パラセーリングの人に上空から声をかけられる。/18時、Road22で給水。チップスとジャーキーの夕食で済ます。/19:15再出発。20:30の日没まで歩く。Mt.Shastaと夕日が並んで見える気持ちいのいいキャンプ。/一応お湯をわかし、お茶を入れる。/しかし、どんどん早くなるが本当にこれでいいのだろうか。9月13日GOALを目指してペースを保つべきか、迷う。 Today22.8Mi Total1395.4Mi

 旅も長くなれば、疲れもたまる。疲れがたまれば、意図せずストレスもたまる。この朝の僕の状況はそんな感じだった。普段僕はイビキなんてかかないほうだが、ここんとこは体にも疲れがたまっていたのだろう。部屋をシェアしたDNAはお前のイビキがうるさいと朝から機嫌が悪かった。僕も悪いことしたなあ、とは思ったが、それはそれで、不機嫌な奴の顔を見ているのも気分が悪かった。石部さんが日本語で気にするな、と言ってくれたのがほんとにありがたく聞こえたのを思い出す。

 Belden,OldStation,BurneyFalls,Castella、この街の名前を思い出すたびに、全行程の中でもこのあたりが一番しんどかったのを思い出す。SouthLakeTahoeの先で滑って打った右のお尻あたりがずっと鈍く痛み、BenGeyという消炎剤を朝晩塗りながら歩いていたこと、暑くて水もなんだか良くなかったこと(水の良し悪しが分かるようになる)、トレイルもあまり整備されておらず、ミスコースや倒木を越えたりくぐったりの余計な労力を強いられたこと、湖畔のキャンプで蚊に囲まれたことなどなど。

 疲れがたまっていたのは自分でもよくわかっていた。そのため、BeldenでもここOldStationでも一日ずつRestDayを設けて体調管理に努めた。ここまで3ヶ月間の旅のおかげで、自分の体のことが良くわかるようになっていた。自分の体をいたわり、ときには負荷をかけることで、自分の体に対する信頼は厚みを増していった。

 全行程の半分を終え、この日初めてカナダまでのスケジュールを立てた。いつ終わるとも知れない2650マイルの旅に、終わりが、見えてきた。
7月16日、OldStationの先。溶岩台地のような、ごつごつしたひらけた地形が続く。ところどころこうしてぽっかりと洞窟が口をひらいている。なお、OldStationからは全行程中最も長い水無し区間(約33マイル)があるが、1392.5MiのRoad22にトレイルエンジェルが水を置いてくれているはずなので心配無用。
HatCreekRimの景色。ほんのうっすらとシャスタが見えている。
てくてく歩いていると、どこからともなく声がする。「上を見ろ!」と言われて見上げると空に人。
画面中央にシャスタの頭が見えてきた。乾いた大地が続く。
野には花、花には蝶。
田舎ののどかな用水池。釣りの看板がでている。変哲も無い景色だけど、水がすくないエリアでなんとなく印象に残った。
画面右側にだいぶシャスタが大きくなってきた。この山のふもとには同じ名前の町がある。
7月21日、Castellaの郵便局でパックする石部さん夫妻。お二人もだいぶお疲れの様子。

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