第5部ワシントン
 第1章 トレイルは氷河の峰へ(2)

  2003年8月20日(水)Cascade Locks 〜2003年9月5日(金)Stehekin


8月23日(土)
 6時40分、DNAに起こされる。明け方急に冷え込んでテントが結露している。/7時半出発。今日はのんびりと進む。ザックのショルダーストラップが切れかけていることに気づく。トレイルで縫い直すがうまくいかない。White Passで直さねば。これが切れたらおしまいだ。/今日も一日、DNAと抜きつ抜かれつしながら進む。/Goat Rocks Wildernessに入ってから景色がぐっと良くなる。写真の枚数も増える。/夕方、水をFill upして稜線上でキャンプ。ヤギを見る。/風が強く、気温が急に下がる。/Mt.Rainerの夕焼けがすごい。/夕食はパスタとみそ汁。やはりテントは快適だ。/Today 24.6 Total 2282.2Mi

 PCTはどこを切り取っても絶景・風光明媚の連続だが、シエラネバダの次に迫力ある景色をあげるとすれば、ここゴートロックス・ウィルダネスだと思う。ゴート、とはヤギのことだが、このエリアには実際野生のヤギ(マウンテン・ゴート)が生息しており、幸運に恵まれればその姿を見ることも出来る。僕は偶然にもその幸運に恵まれ、見逃したDNAは随分と悔しがっていた。
 ヤギとヒツジとの違いはあるが、昔読んだシートン動物記に、大きな角をもった山ヒツジとそれを追う猟師の物語があったのを思い出す。熊にせよ何にせよ、やはり大型の野生動物が生息できる環境は、その自然の大きさをストレートに表現してくれる。
 まずは写真を見てもらいたいが、マウントレーニアを背景に、重なり合う峰の稜線上を延びるトレイルは、ただただ荘厳の一言に尽きる。

 この風景の中に、自分が存在していたことを、今は遠い昔のように思い出す。
ウィルダネスにはいったとたんに風景がよくなる。良く出来た制度である。
振り返ればマウント・アダムス。
秋の空に、レーニアと友。
レーニアを望む背中。お気に入りの一枚。
稜線上をトレイルは北へ。重なり合う峰の向こうにそびえるレーニア。山への旅情をそそる一枚。
画面中央、白い岩のように見えるのが実は野生のヤギ。このときほど、カメラにズームがついていないのが口惜しかったことはない。10分ほど眺めていたが、そのうちゆらりと立ち上がって谷底へと消えていった。
茜色、とはこういう色を言うのだろう。夕陽を浴びて山が燃えるように染まる。

トレイルは氷河の峰へ(1)に戻る  トレイルは氷河の峰へ(3)へ進む