第5部ワシントン
第1章 トレイルは氷河の峰へ(3)
2003年8月20日(水)Cascade Locks 〜2003年9月5日(金)Stehekin
8月26日(火)
6時15分起床、7時出発。/トイレは出発前に済ませるべきだ。/朝から風が強く、やや天候不順。レーニアの山火事のニオイがする。雲が低く、トレイルを覆っている、一日中ジャケットを脱いだり着たりしながら進む。ザックをおろす回数が増えると面倒だ。/細かなアップダウンが多く、そんなにスピードが上がらない。景色も見えず、単調なハイクが続く。/平日ということもあり、そんなに人にも会わない。/18時15分、Goverment Meadowのシェルターにつく。既に5人ほどのハイカーがいて混雑。暗いし、人も多いので、離れたところでキャンプする。テントのほうが落ち着く。雨が少々面倒だが、こっちのほうがいい。/明日30マイル歩けばSnoquolmeはもうすぐだ。終わりを考えながら歩き続ける。/あと12泊13日、うち街が3泊、テントが9泊。/旅が、終わる。 Today 27.8Mi Total 2350.3Mi
ひとりで旅をしてきたというと、浮世離れした、気難しい奴かと思われるかもしれないが、自分は決して、人嫌いなほうではないと思う。むしろ人好きだと思うし、(好かれているかどうかは別問題だが)、社交的だとの評も受ける。ただし、このPCTのような挑戦に関しては問題は別だ。
PCTの話をするとき、一人で旅をしてきたことを驚かれることも多い。もちろん、単独行はリスクも多いが、その反面単独だからこそのメリットも多い。PCTのような長丁場の旅をするとき、自分のペースで歩くことができるというのは、とても大事なことだ。
石部さんご夫妻のように、生涯の伴侶と旅をともにすることができるというのも大変に幸せなことだが、僕はやはり、今回のPCTはひとりで行って本当に良かったと思っている。なぜなら、これはどこまでも僕自身への挑戦であったのだから、全てはひとりで責任をとり、結果を享受するものでなければなかったのだから。
次の挑戦も、おそらくひとりでのものになるだろう。いつになるかは分からないし、また今回同様に多くの人の支えを頂いてのものになるだろうが、自らの挑戦に責任を持つ、あのときの矜持を忘れないでいたい。
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